お客さまをもてなす際、飲み物とあわせて出すのがお茶請けです。
ようかん、最中などの和菓子のほか、ケーキやクッキーといった洋菓子が一般的です。
このお茶請け、実は「請け」という字に少し意外な意味が込められています。
その意味をご存じでしょうか?

この記事では、お茶請けが持つ本来の意味を解説するとともに、お茶請けの主な種類とお客さまに提供する際のマナーについてご紹介します。

【目次】

1. お茶請けの基礎知識

2. お茶請けの主な種類

3. お茶請けを出す際のマナー

4. こだわりのお茶請けで、お客さまに上質なおもてなしを

お茶請けの基礎知識

お茶請けは、お茶の文化とともに発展したおもてなしの一つです。
お茶請けの由来や歴史、言葉の持つ意味などについて解説します。

●お茶請けとは?
お茶請けとは、お茶の味を引き立たせるための食べ物のことで、お客さまにお茶を出す際に一緒に提供されます。
また、コーヒーや紅茶など、お茶以外の飲み物と出される場合もお茶請けと呼ばれます。
お茶請けの種類は和菓子が代表的ですが、チョコレートから漬物まで、種類は多岐にわたります。

「お茶請け」の漢字が、なぜ「受け」ではなく「請け」なのか、疑問に感じた人はいないでしょうか。
理由は、「請」が持つ漢字の意味にあります。
「請」には「支える」「引き立てる」という意味合いがあり、お茶請けがお茶の味を引き立たせることから「請け」という表記になったとされています。

●お茶請けの由来
甘いお菓子というイメージがあるお茶請けですが、古くは栗や木の実、麩焼き(ふのやき:小麦粉を水で溶いて薄く焼き、みそを塗って丸めたもの)、みそで炊いたシイタケなど、甘くないお菓子がお茶会の場に出されていました。
安土桃山時代に、カステラやカラメルなどの洋菓子が伝来すると、京都や江戸を中心に甘い和菓子の生産が活発になっていきます。
練り切りなど現代の和菓子に近いものが出されるようになったのは江戸時代以降のことです。

また、お茶請けは地方によって違いがあり、関東では黒砂糖を甘味に用いた雑菓子、関西では生菓子が主流でした。
東北や中部地方では、たくあんなどの漬物がお茶請けに使われ、現在もお茶の場で提供されています。

お茶請けの主な種類

日本茶には、一般的にどのようなお茶請けが提供されているのでしょうか。
ここでは、和菓子から洋菓子、漬物まで、代表的なお茶請けの一部を見ていきましょう。

●和菓子
・練り切り
白あんに求肥(ぎゅうひ)を加えて作った練り切りあんを使い、和物の形に造形した、お茶請けに定番の美しい和菓子です。
上品な細工が丁寧に施され、春は桜、夏は紫陽花といった季節の草花がモチーフとなったものがあり、四季を感じることができます。

・桜餅
塩漬けにした桜の葉で餅菓子を包んだ和菓子です。
地域によって違いがあり、関東では小麦粉を水で溶いて薄く焼いた生地であんを包んだクレープ状、関西では道明寺粉で作った生地であんを包んだまんじゅう状の餅菓子として定着しています。

・ようかん
ようかんは小豆のあんを型に流して、寒天で固めた和菓子です。
練りようかんや水ようかんなど複数の種類があります。
練りようかんは寒天の量が多く、硬めの食感で、濃厚な甘みが特徴です。
水ようかんは、寒天が少なく柔らかい食感で、さっぱりと食べることができます。
特に夏場に好まれるお茶請けの一つです。

・大福
大福は、小豆のあんを餅で包んだ餅菓子の一種で大福餅とも呼ばれます。
餅に豆を加えた「豆大福」や、よもぎを加えた「よもぎ大福」、あんの中にいちごを入れた「いちご大福」など、含める具材によって幅広い味わいを楽しむことができる和菓子です。

・栗もなか
餅粉を薄く焼いた皮で、あんを挟んだ和菓子がもなか(最中)です。皮の香ばしさとあんこの甘みがよく合います。
栗もなかは、あんの中に栗を入れたものです。
栗のほど良い甘みとごろっとした食感が魅力で、食べごたえを感じられます。

・饅頭
小麦粉をこねて作られた皮であんを包みせいろで蒸して作る饅頭は、蒸菓子(むしがし)の定番です。
小豆のこしあん、つぶあんのほか、えんどう豆で作ったうぐいすあん、黄身あん、栗あん、抹茶あん、味噌あんなど、数多くの種類があります。

・せんべい
小麦粉または米粉をこね薄く伸ばして焼いた、歯ごたえのある香ばしいお菓子です。
生地に卵や砂糖などを加えたり、表面に醤油などを塗ったりして焼くことで味わいが深まり、甘い味も塩っぽい味も楽しめます。

●洋菓子
・ケーキ
ケーキはお茶請けに出される洋菓子の定番です。
イチゴを乗せたショートケーキ、チョコレートクリームのケーキ、栗のペーストを使ったモンブランなど種類は豊富にあります。
甘く濃厚な味わいは、コーヒーや紅茶はもちろん、さっぱりとした日本茶にもよく合います。

・チョコレート
カカオ豆を主な原料とする洋菓子で、砂糖やミルク、トッピングによって甘さが変わったり、味にアクセントが加えられたりします。
そのためミルク味やビター味、ナッツやヌガー入り、生チョコレート、ガナッシュ、トリュフなど、味も種類もさまざまな商品が販売されています。
すっきりとした苦味があるお茶には、濃厚で甘みのあるチョコレートがぴったりです。

・クッキー
毎日のお菓子の代表格であるクッキーも、お茶に合わせやすい洋菓子です。
シンプルなバター風味のほか、ココアや抹茶味、チョコレートチップやナッツ、レーズンをトッピングしたタイプなど多様な種類があります。
甘みのあるお茶には塩味の効いたクッキーなど、お茶の特徴に合わせて選んでみてはいかがでしょうか。

・パウンドケーキ
バターケーキの一種で、小麦粉、砂糖、バター、卵を1パウンドずつ使って作ることから名付けられました。生地に抹茶を加えたり、チョコレートチップやナッツ類、洋酒漬けのフルーツを入れたりと、味付けも多様です。
しっとりとして凝縮感のあるパウンドケーキに、お茶の渋味がよく合うでしょう。

●お菓子以外のもの
・漬物
浅漬け、たくあんなど、お惣菜として食されるイメージが強い漬物ですが、古くからお茶請けとしても食されてきました。
浅漬けや千枚漬けにはほど良い渋味のあるお茶が、味と香りの濃い漬物は焙煎されたほうじ茶がよく合います。

・ピクルス
欧米の漬物と言えるピクルスも、さっぱりとした煎茶によく合うお茶請けです。
キュウリやニンジンなどの野菜を酢漬けにしたピクルスは、そのままはもちろん、発酵させて酸味を強くする食べ方もあります。

・干し数の子
味付けした数の子を干して作る珍味が、干し数の子です。
干して水分が減った数の子には旨みが凝縮されており、つぶつぶとした独特の食感を味わえます。

お茶請けを出す際のマナー

お茶請けの種類だけでなく、出し方にも配慮が行き届いていると、お客さまに心地良い時間を提供できるでしょう。
ここでは、お茶請けを出す際に気をつけたいマナーについてお伝えします。

●出す順番と置き方に気をつける
お客さまにお茶請けをお出しするときは、左からお茶請け、お茶、おしぼりの順に置くのが基本的なマナーです。
お客さまから見て左手にお茶請け、右手に茶碗を並べる形です。
おしぼりを出す場合はもっとも右手に置きます。
先に出した物の上に、別の物を通過させる行為は「袖越し」といい、マナー違反となるため避けましょう。

●お茶請けを引き立てるワンポイントを添える
お茶請けを出すときは、盛り方にもこだわりましょう。
練り切りやようかんなど、小さく切って食べる和菓子には楊枝を添えると、食べやすいことはもちろん、見栄えも良くなります。
竹製だけでなく、高級感のある細工が施されたステンレス製など、お茶請け用の上品な楊枝が数多く販売されています。
また、お茶請けを直接お皿に乗せるのではなく、風流な敷紙を使ってみてはいかがでしょうか。
見た目が華やかになるだけでなく、お皿が汚れにくくなるというメリットもあります。

●相手の好みに合ったお茶請けを出す
お茶請けで出されるお菓子に明確な決まりはありません。近年は洋菓子が緑茶とセットで提供されたり、コーヒーや紅茶のお茶請けに和菓子や果物が出されたり、お茶請けの種類も使用されるシーンもさまざまです。
「お茶請けには和菓子」と、定番の組み合わせにこだわりすぎず、相手の好みやシーンに合わせたお茶請けを選びましょう。

こだわりのお茶請けで、お客さまに上質なおもてなしを

定番の和菓子から洋菓子、漬物に珍味まで、バリエーション豊かなお茶請け。
お客さまの好みに合わせて選ぶことはもちろん、季節を感じられるお菓子を合わせたり、お正月やクリスマスなどイベントならではのお菓子を探したりと、お茶請けを選ぶ時間自体も楽しいものです。

美味しいお茶とこだわりのお茶請けをお出しして、お客さまと過ごすひと時に彩りを添えてみてはいかがでしょうか。