煎茶の淹れ方

多くの人に親しまれている煎茶。
お客さまをもてなすときや家族団らんのひとときなど、煎茶は日常生活のさまざまな場面で飲まれています。
煎茶の入れ方にはポイントがあり、お湯の温度や抽出時間などに配慮することで、より美味しさを引き出すことができます。
では、どのように入れるのが良いのでしょうか。
この記事では、煎茶本来の味を引き出す基本的な入れ方と美味しく入れるポイントについてご紹介します。

【目次】

1. 煎茶の入れ方

2. 煎茶を美味しく入れるポイント

3. 一人分・大人数分用の煎茶の入れ方

4. 煎茶を美味しく入れるポイントは、湯温・抽出時間・茶葉の量

煎茶の入れ方

煎茶を美味しく飲むには、どのような手順が適しているのでしょうか。
煎茶の入れ方の基本についてお伝えします。

●入れ方の基本

・お湯を湯呑みに注ぐ
まず、沸かしたお湯を人数分の湯呑みに注ぎます。
この工程は「湯冷まし」と呼ばれ、主に2つの目的があります。
1つ目は、お湯で湯呑みを温めることです。湯呑みが温まっていると、急須から湯呑みに煎茶を注いだ後の温度変化を防ぐことができ、味わいを保つことができます。

2つ目は、お湯の温度を冷ますことです。
沸騰したお湯をそのまま急須に入れると、お茶の雑味が強く抽出されやすくなります。
そのため、茶葉にお湯を注ぐ前に、適温まで冷ます必要があります。
煎茶に適した湯温の目安は80~90℃で、新芽を摘んだ上級の煎茶なら少し低めの70℃が適温です。
熱湯は、常温の湯呑みや急須に注ぐたびに、約10℃下がるといわれています。
沸騰した100℃のお湯を湯呑みに注ぐと、約90℃になります。
また、湯呑みのお湯を常温の急須に入れ替えると、さらに80℃まで下げることが可能です。
もっと温度を下げたいときは、急須に入れる前にほかの容器に移し替えるなどの温度調整を行うと良いでしょう。

・茶葉を急須に入れる
湯冷ましをしている間に、急須に人数分の茶葉をセットしておきましょう。
1人分は、ティースプーン約1杯分(約2g)が適量です。

・湯呑みのお湯を急須に入れる
適温になった湯呑みのお湯を急須に移します。
茶葉の抽出時間の目安は約30~60秒です。茶葉が開き、成分が引き出されるのを待ちます。

・茶碗に注ぐ
急須の煎茶を、温まった湯呑みに注ぎます。
その際、最後の一滴までしっかり注ぎきることがポイントです。
茶葉の旨みは時間をかけて少しずつ溶け出していきます。
最後の一滴まで注ぐことで、凝縮された旨みを味わうことができるでしょう。
また、急須にお湯を残しておくと、二煎目の味が落ちやすいというデメリットがあります。理由は、茶葉に含まれるカフェインやカテキンが溶けだし続け、二煎目の苦味・渋味が強くなってしまうからです。

●二煎目の入れ方

・フタをずらして開けておく
一煎目を注ぎきったら、急須のフタをずらして熱気がこもらないようにしておきましょう。
フタを閉めたままにしておくと、茶葉が蒸れて味が損なわれるおそれがあります。

・茶葉の高さをそろえる
一煎目を注いだことで、急須内の茶葉が注ぎ口側のほうへ集まっています。
この状態のままお湯を急須に入れると、茶葉の成分がバランス良く抽出されにくくなります。
急須の注ぎ口と反対側を軽く叩き、茶葉の高さを一定にしてからお湯を注ぎましょう。

・90℃を超えるお湯を急須に入れる
二煎目は、一煎目よりも熱い約90℃のお湯を入れます。
高温のお湯によって引き出される苦味・渋味が、茶葉に残った旨みとほど良く溶け合い、味のバランスが整えられます。

・10秒ほど抽出し、お茶を注ぐ
二煎目は、茶葉がすでに開いてお湯が浸透しやすくなっているので、一煎目よりも短時間での抽出が可能です。
10秒ほど抽出したら、湯呑みに注ぎましょう。

煎茶の淹れ方

煎茶を美味しく入れるポイント

煎茶を美味しく入れるには、使用する水の選定やお茶の注ぎ方にも気を配る必要があります。煎茶が一層美味しくなるポイントをご紹介します。

●使用する水にこだわる
美味しい煎茶を入れるには、軟水の使用が適しています。
日本の水のほとんどは軟水ですが、井戸水や湧き水を使うと、お茶本来の味を引き出しやすく、特に美味しく抽出できます。
市販のミネラルウォーターを使用する場合は、日本で採取された水を選びましょう。
海外のミネラルウォーターは、硬水が多いからです。
水道水も軟水ですが、殺菌のためにカルキ消毒されていますので、そのまま使用する場合はカルキ臭を抜く必要があります。
やかんやポットなどで水道水を沸騰させた後、フタを外してさらに2~3分加熱し続けると、カルキ臭を飛ばすことが可能です。

●抽出時間を取りすぎない
抽出時間が長くなるほど、茶葉の成分が多く抽出されます。
旨みも抽出されますが、同時に苦味・渋味も強くなります。
煎茶の味わいを保つために、一煎目、二煎目に適した抽出時間を守りましょう。
特に二煎目では、一煎目で開いた茶葉に熱湯を注ぐため、より苦味・渋味が抽出されやすく、注意が必要です。

●注ぐ前に茶葉の開きを確認する
急須から湯呑みに注ぐ前に、茶葉の開き具合を確認しましょう。
茶葉が開きかけたら飲み頃です。
茶葉の様子を確認しながら、タイミングを逃さず注ぎましょう。

●回し注ぎをする
数人分の煎茶を入れる場合に大切なのが、「回し注ぎ」です。
1人分の湯呑みにお茶を一気に注ぐと、全員分のお茶の濃さや味を均等に保ちづらくなります。
それを防ぐのが回し注ぎで、人数分の湯呑みに少しずつお茶を注ぐことで、濃さや味を均等に保ちます。
ポイントは、一周目を全員分注ぎ終えたら、二周目は最後に注いだ湯呑みから、一周目とは逆の順番に注いでいくことです。
お茶は、後にいれるほど味が濃くなっていきます。
そのため、一周目は初めに入れたお茶よりも後に入れたお茶のほうが濃くなりますが、二週目を逆順に注いでいくことで、お茶の濃さを整えることができます。

1人分・大人数分用の煎茶の入れ方

1人分を準備するには急須の容量は大きすぎたり、大人数分入れるには急須に入る分量では足りなかったりと、ちょうど良い分量のお茶を用意することに苦労する人もいるのではないでしょうか。
ここでは、1人分・大人数分のお茶を手軽に美味しく入れる手順をご紹介します。

●1人分には茶こしを使う
1人分の煎茶を入れるときは、茶こしがあると急須を使わずに済むので便利です。
茶こしで煎茶を入れるときは、湯呑みやマグカップの飲み口に設置します。
その後、1人分の茶葉を茶こしにセットして、湯冷ましをしたお湯を入れます。
茶葉の成分がほど良く抽出したら、茶こしを取って出来上がりです。

茶こしは、長い柄の先に丸型の網ボウルが付いたタイプが一般的ですが、ほかにも湯呑みやマグカップにセットして使える、筒型タイプも販売されています。
筒型タイプを使うと、深さのある湯呑みやマグカップなどでも、茶葉がしっかりお湯に浸るため、少量のお湯でも抽出しやすい点がメリットです。
茶こしはティーストレーナーという名称でも販売されています。
機能に合わせて多くの種類があるので、好みの商品を見つけましょう。

●大人数分用意するときはティーポットを使う
大人数に煎茶をふるまう場面で、一般的な急須では全員分入れられないことがあります。
そんなときに役立つのが容量の大きなティーポットです。
ティーポットを使って煎茶を入れる際も、まずは人数分の湯呑みにお湯を注ぎます。
次に、湯冷まししたお湯を、茶葉をセットしたティーポットに移しましょう。
急須でお茶を入れるときと同様に抽出し終えたら、湯呑みに回し注ぎしていきます。大人数分でも均等な濃さで入れることが可能です。

保湿性に優れた陶器製や茶葉の開きを外から楽しめるガラス製など、さまざまなタイプが販売されています。

煎茶の淹れ方

煎茶を美味しく入れるポイントは、湯温・抽出時間・茶葉の量

美味しい煎茶を入れるには、お湯の温度と抽出時間への配慮が大切です。
また、適度な味の濃さにするためには、茶葉の量の調節も欠かせません。
1人分はティースプーン1杯程度が目安です。
基本的な入れ方を覚えたら、温度や抽出時間に変化を加えて、自分好みの味を見つけてみてください。
少しの違いで味の変化を感じられたら、より一層、煎茶の魅力を感じることができるでしょう。